資産形成入門編の第一回目は「資産形成の大原則とその手段」についてお話ししました。
資産形成入門編の第二回目以降は、収入を増やし支出を減らすそれぞれの手段の概要を紹介していきます。
なお、俯瞰的に広い視野でなるべく多くの機会を紹介したいため、中には専門知識や経験を要するものなど万人向けでないものも多々出てきますが、世の中こういうのもあるんだなあという程度に思っていただければと思います。
さて、最初に、現代社会において最も普及している収入源である会社勤めによる収入についてお話しします。ただし、この手段は普及のあまり皆さんがすでに知っていることが多いため、本記事では、一般常識と思われることはなるべく割愛し、逆に普段馴染みが薄いトピックを取り上げ、知識の差分を埋めたいと思います。
会社勤めによる、給料やボーナスなどの対価
まずは、おさらいですが、会社勤めして得る給料は、言うまでもなく、労働者(社員)が労働力や時間、サービスを提供する対価として雇用主(会社)から受け取る金銭のことです。少し古い言い方をするとサラリーですね。正社員、契約社員、アルバイトなどいくつかの契約形態に違いがあるものの、基本的には、労働時間や会社への貢献度に基づいて、月収・年収或いはボーナスなどの対価を受け取ります。詳細説明は世の中でありあふれているので、ここでは割愛します。
なお、国によって会社勤めの形態が異なるので、一概に比較は困難ですが、参考までに大枠の状況を載せておきます。
雇用者数 / 就業者数 | 労働人口 | 対労働人口率 (%) | |
日本 | 5,618万 *1 | 5,700万 | 98.6% |
アメリカ | 1億4,300万 *2 | 1億6,300万 | 87.7% |
中国 | 約 8億 *3 | 約 10億 | 80.0% |
*1 正規雇用者と非正規雇用者の合計。
*2 アメリカは就業者のうち本業あるいは副業フリーランスが4割以上と多数含まれる。その内訳は次回。
*3 発表方法により大きく数字が異なってくるので、かなりの概算。
会社勤めによる、自社株(RSU)という対価
同じ会社勤めによる対価ですが、給料とは別に、少し馴染みが薄い給与対価として、その企業の自社株(RSU)を支給してもらうというのもあります。この方法は、欧米系企業などで多く見られ、そのような企業への就職を考えている方には是非とも知っていただきたいのですが、万人向けな手段ではありません。ただ、他ではめったに紹介されることがなく、もし活用できれば効果絶大なので、ここで敢えて取り上げてみます。
多くの欧米企業では(もちろん欧米資本の日本法人でも)、入社時や毎年の業績や昇級に合わせて自社株を社員に支給します。自社株のメリットは何と言っても将来のその会社の株価の値上がりにあります。支給時では年収の数割にも満たない株の価値でも、数年後株価が上がれば、結果的に収入が倍増することになります。
例えば、2010年にAmazonに転職入社し、入社の条件として、年収1,000万円と、年収の1割に相当するAmazon株(当時100万円相当)を支給されたとします。2010年時点でのAmazon株は、1株 約7ドル、為替は1ドル=約90円でしたので、約1,587(= 100万円 ÷ 7 ÷ 90)のAmazon株を支給されます。仮に、その1,587株を売らずに、2020年まで保持した場合、2020年ではAmazon 1株 約150ドル、為替は1ドル=約105円でしたので、その時点での価値は 約2,500万円 になります。最初の100万円相当株の支給から、10年で何と25倍に膨れ上がったのです。仮に為替差益を考慮しなくても、約 21倍の増加です(= 150 ÷ 7)。
GAFAM(Google, Amazon, Facebook, Apple, Microsoft)などのテック企業の社員や出身者で、年収は国内企業とさほど変わらないのに、数億円単位の資産を持っているのは、実は給料が高いのではなく、大抵自社株による恩恵です。
ちなみに、会社側にとっては、給料ではなく自社株を支給することで、社員のモチベーションや貢献度の引き上げ、退職率の引き下げにつながるので(しかも半端なく)、社員と会社の双方にとってメリットがある画期的な対価支払い方法であると言えます。
ただ、自社株を支給する企業はかなり限られる上、そういった優良企業に入社するハードルの高さ、そして何より、将来株価がどれくらい上がるかなんて不明、という制限が多くあるため、積極的に狙っていくような手段では決してありません。世の中こういうのもあるんだなあという程度に思っていただければと思います。
次回は入門編第三弾として「収入源2:ビジネスの立ち上げ」について紹介させていただきます。